湾内の堤防や沿岸の岩礁帯といった浅い海に生息するヘダイ亜科クロダイ属の魚。
体形はマダイに似た、いわゆるタイ型だが、体色は銀灰色。クロダイの名はそこからつけられた。
幼魚期には銀黒色の明瞭な横縞が6〜7本あるが、成長とともに薄くなっていく。
他のヘダイ亜科の種と同様に、両アゴの前部に6本の犬歯があり、両アゴ側部には臼歯が3列以上並ぶ。
他種との区別は、背ビレの棘条部中央下から側線までの隣の数が6枚から7枚と他種よりも多いところで見分けられる。
また、幼魚期から体長20cmほどの若魚期(4年魚)にかけては、性的に未分化の状態にあり、雌雄同体として過ごすという特徴がある。
5年魚以降になると、多くは雌に性分化する。
これは他のタイ科の多くの種に共通して見られる特徴である。
分布は、琉球列島を除いた北海道以南で、朝鮮半島の南部や台湾、中国の北中部沿岸域に限られる。
日本ではクロダイと呼ばれる事が多いが、関西や四国ではチヌ、九州ではチンと呼ばれている。
また、出世魚でもあり、幼魚をチンチン、若魚をカイズと呼ぶ。
生息場所は、内湾性、浅海性の傾向が強いため沿岸の岩礁帯や湾内の堤防を好み、幼魚から若魚のうちは河口部や内湾などの汽水域に多く見られる。
産卵は春から初夏にかけて行い、直径0.9mmの分離浮性卵を産む。
食性は雑食性で、カニやエビといった甲殻類の他、貝類やウニなども食べる。
大きさは最大で全長60cm以上にも及ぶが、普通30〜40cmで良型とされる。
食味は夏がよく、マダイに劣らない美味な白身。 |